下灘駅に惹かれ伊予市に移住。まちづくりと今後の展望に迫る。

伊予市の人々

荒井 綾子 (あらい あやこ)【伊予市地域おこし協力隊】

経歴

仕事を辞めた後、車で旅をしているときに知った愛媛にいつか住みたいと思い、約2年前に横浜から伊予市へ移住。現在は伊予市で観光協会を新設する取り組みを行っている。

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※2022年5月に取材、執筆した際の情報です。


伊予市に移住した経緯

荒井さんは横浜から移住されてきたと伺いました。どうして伊予市を選ばれたのですか?

『ドキュメント72時間』というNHK番組で、2016年頃に伊予市の下灘駅が取り上げられているのを見ました。「こういうところで旅をしてみたい。」と感じたのが最初のきっかけですね。

翌年、仕事を辞めたのを機に思い立って、下灘駅に行ってみたんです。夕やけこやけラインを車で走っているとき、「いつか住んでみたいなあ。」というふうにぼんやりと思いました。

それから2年が経ち、都会での暮らしも充分楽しみましたし、仕事も満足しました。その頃にLINEのアイコンにしていた下灘駅を見て、住みたいという感情をふと思い出し、移住に繋がりましたね。

伊予市はとても思い入れのある場所なんですね。荒井さんの思う下灘駅の魅力を教えていただきたいです。

そこが言語化できないんですよね、笑。私にとって下灘駅は神秘的で夢の国のような場所です。空と海の青一色で現実感がなく、同じ日本にいても時の流れが全然違うなあと感じます。

―下灘駅には言葉で表せないほどの魅力があるのですね。

下灘駅ホーム

現在のお仕事について

『伊予市地域おこし協力隊』では、どのようなお仕事をされていますか?

地域おこし協力隊では総務省の制度の下、都市から過疎の地域に人を呼び込む地域おこしに取り組んでいます。協力隊はミッション型とフリーミッション型に分かれています。私はミッション型の活動をしていて、市役所や観光協会の職員と一緒に伊予市の観光協会を会社として法人化させる取り組みを進めています。フリーミッション型では、カフェやゲストハウスを開業する起業型の取り組みを行っているようです。

ミッション型では具体的にどのような業務が行われているのでしょうか?

法人を立ち上げるミッションだけではなく、地域の方との関わりも大切にしています。1年目は物産に関わる農家さんや漁師さんからお話を聞き、伊予市について知るところから始めました。

伊予市は約10年前から協力隊を受け入れているので、地域の方からの理解があります。「次、この人を紹介しますね。」と言ってくださることがよくあるんですよ。そのおかげもあって、様々な事業をしている人と繋がることができています。日昇(ヒノボリ)もそうなんですよね。

地域を知ることも協力隊の仕事のひとつで、地域の方と知り合って伊予市がどういうところか、移住者目線で考えています。伊予市の観光と物産の入り口として、双海や中山にある道の駅だったり、産直市だと町家やいよっこらがあります。そういうところに行って色々な人と繋がり、法人化したときにどうなっていくかというような実態調査が多いかもしれないですね。

―愛媛県の協力隊の雰囲気はどのような感じですか?

協力隊ネットワークは、いろんな経歴の人やいろんな考えの人に出会えるのですごく面白いです。私が知っている人の中には、大学生のうちから起業し始める人や学生で社会人経験のない人、都庁で働いていた人が60歳を過ぎてから入隊しているなど多様な経歴の人も多いんですよ。

―荒井さんが移住してきた側だからこそ活動に活かせたことはありますか?

移住希望者とSNSを通じて繋がり、実際に移住している方もいますね。移住したい方と担当者を繋げたり、空き家のオーナーの方とやり取りをし情報を得ることで活動に活かせています。

―荒井さんは卒隊後、協力隊で得た経験をどう次に繋げていきたいですか?

私は協力隊3年目で、今年で卒隊なので今後について考えるようになりましたね。横浜の友人を伊予市の旬な場所に連れていくのが好きで、アテンドやガイド業に興味があったのですが、かなりハードルが高いんですね。なので『民泊』をしようと思い、今は空き家を探しています。

―民泊をする上でターゲットにしたい顧客層はありますか?

関東の友人や協力隊の仲間に利用してもらいたいです。また、伊予市で民泊をされている方にお話を聞いたところ、帰省客のニーズもあるようです。まずは今、自分に見えているマーケットを狙い、スモールビジネスから始めたいと思っています。民泊に来ていただいた方には愛媛、そして伊予市の魅力をその人に合った形で提案し、循環させていきたいです。

お話をする荒井さん

伊予市の魅力と荒井さんの人生観

―移住者の目線から、伊予市の魅力について教えていただけませんか?

焼杉の壁と瓦屋根の家が多く、その風景がすごくいいなあと移住してきて感じましたね。移住当初唐川びわの時期で、空の青に山の緑、びわの袋のオレンジ、3色が愛媛っぽくて春に咲いている菜の花を見てとてもほっこりします。

綺麗な海に自然豊かな山や島など伊予市の魅力は沢山あるのですが、常に暮らしている人に伝えようとしても「ほーなん?」の一言で終わってしまうんですよね、笑。

―これまで色々質問させていただきましたが、最後に質問です。荒井さんが様々な経験を経て今この場所に辿り着いているのは、生きる上で何か大切にしているものがあるからだと思います。荒井さんの人生観についてお聞かせいただけますか?

若い頃から、自分の心や感覚を大切に行動するというのがベースにありましたね。とはいえ、仕事をしながら家庭を築く社会の定型文しか知らなかったんですよ。無意識のうちに普通に大学に通って、就職はしました。でも、それ以外の世界を知らずにずっと同じ環境で働き続けていたので「今、社会ってどうなっているんだろう。」と思ったんです。それから考え方が変わり、行動に移すようになりました。顕在化されているものは1割で、9割は潜在化されているという話から、9割の世界にはもっと宇宙的なものがあると思うのです。

それが下灘駅へ旅をするきっかけとなり、「のんびりと海を眺めながら暮らしたい。」という潜在的な意識が顕在化されることで移住に繋がったんだと思います。下灘駅への旅が伊予市移住に繋がるとは思いもしませんでしたが、きっと潜在的に自分が求めていることだったのでしょう。一見、思いつきのような発想が自分の本質だったりするので、心や感覚を大切にするようにしています。自分の心や感覚と一致していることで、自ずと上手くいくものです。

20歳のときに「20年後、穏やかな海にオレンジ色の夕日が輝くような心の人になっていたい。」と思っていて、今本当にそういうところで暮らしているんですよね。潜在的に自然と行動しているんだなあと不思議な気持ちになります。

―今回は貴重なお話をありがとうございました!

荒井さん

インタビューを終えて:
伊予市愛に溢れ、気さくなお人柄が素敵な荒井さん。移住者視点でのお話を伺い、地元の魅力を再発見するよい機会になりました。インタビューの最後には若者へのエールを送っていただき、荒井さんのような行動力で伊予市の活性化に貢献していきたいと思いました。これからも荒井さんのご活躍を期待しています!

ライター:松山大学 人文学部 社会学科 1回生 A.H

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